【対話記録 #002】パワハラ認定は恣意的だったのか――「一過性の言動」と「はばたんペイの件」を裁判例から検証する

公開議論記録
  1. はじめに――「一度の言動」でパワハラになるのでしょうか
  2. 1.議論の発端――何が争われていたのでしょうか
  3. 2.パワハラを判断する三つの要素
    1. ① 優越的な関係を背景とした言動
    2. ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
    3. ③ 労働者の就業環境が害されること
  4. 3.裁判例から考える――不適切な言動と法的責任の境界
    1. 3-1.三洋電機コンシューマエレクトロニクス事件――事実認定と法的評価を分ける必要性
    2. 3-2.ホンダカーズA株式会社事件――主張された行為が認定されるとは限りません
    3. 3-3.日本ファンド事件――言動の背景や関係性も評価されます
    4. 3-4.三つの裁判例から何が分かるのでしょうか
  5. 4.第三者委員会は、全ての言動をパワハラと認定したのでしょうか
    1. 4-1.「オレは知事やぞ」との発言をめぐる情報提供
    2. 4-2.非認定事例は何を意味するのでしょうか
  6. 5.「はばたんペイの件」――第三者委員会は何を認定したのでしょうか
    1. 5-1.報告書に記された出来事
    2. 5-2.委員会は②についてどう判断したのでしょうか
    3. 5-3.委員会は③についてどう判断したのでしょうか
  7. 6.それでも、③の判断に疑問を示す余地はあるのでしょうか
  8. 7.「他の組織ではパワハラにならない」という比較は成立するのでしょうか
  9. 8.「一過性」という事情をどう評価すべきでしょうか
  10. 9.相手方の主張を補強して検討することについて
  11. 10.議論の経過と検証結果
  12. 11.投稿が閲覧できなくなったことについて
  13. 12.結論――認定への疑問と「恣意的」という断定は異なります
  14. 13.参照資料・関連記録
    1. 第三者調査委員会
    2. 厚生労働省
    3. 対話記録

はじめに――「一度の言動」でパワハラになるのでしょうか

一度の舌打ちやため息は、パワーハラスメントに当たるのでしょうか。

また、上司の言動が不適切であっても、パワハラには該当しない場合があるのでしょうか。

2025年3月19日、兵庫県の文書問題に関する第三者調査委員会は調査報告書を公表し、斎藤元彦知事の複数の言動についてパワーハラスメントに該当すると判断しました。

この判断をめぐり、当研究所は2026年8月21日、X上で別のアカウントと議論を行いました。

相手方は、知事の言動は「一過性」であり、第三者委員会の認定は「恣意的」であるとの趣旨の主張を行いました。また、他の組織では同様の言動がパワハラとされないとも主張しました。

その後、相手方は具体的な事案として「はばタンペイの件」を挙げ、厚生労働省の指針におけるパワハラの三要素のうち、③「労働者の就業環境が害されること」の認定に問題があると指摘しました。

本記事では、当時の投稿記録、厚生労働省の指針、実際の裁判例、そして第三者調査委員会の報告書を照合します。

検証するのは、次の三点です。

  1. 一過性の言動は、パワハラに該当しないのでしょうか。
  2. 不適切な言動であっても、パワハラと認められない場合はあるのでしょうか。
  3. 「はばたんペイの件」における第三者委員会の判断は、恣意的だったのでしょうか。

本記事は、第三者委員会の判断を無条件に支持するものでも、相手方の主張をあらかじめ否定するものでもありません。確認できる事実と判断基準を区別し、双方の論拠を検討します。


1.議論の発端――何が争われていたのでしょうか

今回の議論では、相手方が第三者調査委員会のパワハラ認定に疑問を呈しました。

相手方は、知事の言動について、一般的には「嫌な上司」という程度の評価にとどまるのではないかとの趣旨を述べ、他の組織で同様の言動がパワハラと認定されるとは限らないと主張しました。

これに対し、当研究所は、パワハラ認定のどの要素が誤っていると考えるのか、また、他の組織との比較を裏づける具体的な事例があるのかを尋ねました。

相手方は2026年8月21日の投稿で、次のように回答しました。

質問①の回答
はばタンペイの件。恣意的な認定基準は③

また、他の組織との比較については、次のように述べました。

質問②の回答
具体的な事例を書く必要性は皆無だと思うので拒否

この二つの回答は区別して評価する必要があります。

前者について、相手方は具体的な事案と問題とする成立要件を示しています。したがって、「何も具体的に答えなかった」と整理することは正確ではありません。

一方、後者については、比較対象が示されなかったため、他の組織ではパワハラにならないという主張を具体的に検証することはできませんでした。

重要なのは、相手方が実際に提示した論点を正確に把握したうえで、その根拠が結論を支えているかどうかを検討することです。

2.パワハラを判断する三つの要素

厚生労働省の指針では、職場におけるパワーハラスメントについて、次の三つの要素を全て満たす言動と整理しています。

① 優越的な関係を背景とした言動

職務上の地位や人間関係などを背景として、相手が抵抗や拒絶をしにくい関係の下で行われる言動です。

上司から部下への言動が典型例ですが、役職の上下関係だけで決まるものではありません。

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動

業務上の必要性がない言動や、必要性があっても方法や程度が社会通念上相当でない言動などが該当します。

例えば、業務上の誤りを指摘すること自体は必要な指導であっても、その方法が著しく威圧的であれば、問題となる場合があります。

③ 労働者の就業環境が害されること

言動によって身体的または精神的な苦痛が生じ、就業する上で看過できない程度の支障が生じることです。

判断に当たっては、本人の主観だけでなく、「平均的な労働者の感じ方」を基準とします。

つまり、ある職員が不快に感じたという事実だけで、当然に③が満たされるわけではありません。

一方、具体的な言動が一度だけだったという理由で、③が否定されるわけでもありません。

厚生労働省の指針では、言動の頻度や継続性も考慮されますが、強い身体的・精神的苦痛を与える態様であれば、一度の言動でも就業環境を害する場合があるとされています。

言動の回数は判断要素の一つであって、パワハラ該当性を決める唯一の基準ではありません。

参照:
厚生労働省「あかるい職場応援団――パワーハラスメントとは」


3.裁判例から考える――不適切な言動と法的責任の境界

では、実際の裁判では、どのような事情が判断を分けているのでしょうか。

ここでは、厚生労働省が紹介している裁判例を取り上げます。

ただし、注意点があります。

裁判で不法行為責任や損害賠償責任が認められるかという問題と、厚生労働省の指針に照らしてパワハラに該当するかという問題は、必ずしも同一ではありません。

また、紹介する裁判例には、現在のパワハラ防止法制が整備される以前のものも含まれています。

そのため、これらを現在の指針の三要素についての直接の判断例として扱うのではなく、職場での言動について、裁判所がどのような事実や事情を重視したのかを確認する資料として使用します。

3-1.三洋電機コンシューマエレクトロニクス事件――事実認定と法的評価を分ける必要性

広島高等裁判所松江支部は、2009年5月22日、職場での言動をめぐる損害賠償請求について判断しました。

厚生労働省は、この事件を、パワハラが認められなかった裁判例などに分類して紹介しています。

この事件から確認できるのは、職場で不適切な言動があったと主張されている場合でも、裁判所は、その言動が実際にあったのかという事実認定と、認定された言動が法的責任を生じさせるかという評価を分けて検討するということです。

言動が不快であることと、法的責任が成立することは、同じではありません。

ただし、法的責任が認められなかったという結論だけを取り出して、同種の言動は全て問題がないと一般化することもできません。

参照:
厚生労働省・裁判例第7回「三洋電機コンシューマエレクトロニクス事件」

3-2.ホンダカーズA株式会社事件――主張された行為が認定されるとは限りません

大阪地方裁判所は、2013年12月10日、先輩従業員から暴言や暴行などを受けたとして、元従業員が会社に慰謝料を請求した事案について判断しました。

原告は、先輩従業員による人格を否定する発言など、複数の行為を主張しました。

しかし、裁判所は、主張された行為について証拠に基づく検討を行い、多くの行為について事実として認めることができないと判断しました。

また、認定された言動についても、その内容や状況を踏まえて違法性を検討しています。

この裁判例は、主張された出来事が実際にあったかという問題と、認定された出来事が違法な行為に当たるかという問題を区別する重要性を示しています。

第三者委員会の認定を批判する場合にも、事実認定に異議があるのか、それとも事実を前提とした法的評価に異議があるのかを明らかにする必要があります。

参照:
厚生労働省・裁判例第27回「ホンダカーズA株式会社事件」

3-3.日本ファンド事件――言動の背景や関係性も評価されます

東京地方裁判所は、2010年7月27日、上司の言動をめぐる損害賠償請求について、複数の行為を不法行為と認めました。

この事件では、上司による叱責や侮辱的な言動、身体的な行為などが問題となりました。

裁判所は、個々の言動だけでなく、上司と部下の関係性や、言動が行われた状況なども踏まえて判断しています。

例えば、発言だけを取り出せば軽口のように見える場合でも、それまでの関係性や発言の状況によって、相手に与える意味は異なります。

この裁判例からは、言動の外形だけでなく、その背景や具体的な状況が法的評価に関係することが分かります。

参照:
厚生労働省・裁判例第17回「日本ファンド(パワハラ)事件」

3-4.三つの裁判例から何が分かるのでしょうか

これらの裁判例から、少なくとも次のことが確認できます。

第一に、職場で不適切に見える言動があっても、それだけで当然に民事上の責任が認められるわけではありません。

第二に、問題となる言動が実際にあったのか、その言動がどのような状況で行われたのかを確認する必要があります。

第三に、言動の内容、当事者の関係性、業務上の必要性、相手に与えた影響などを、個別に検討する必要があります。

したがって、「同じような言動が他の組織でも行われている」という指摘だけでは、個別の認定が誤っていることにはなりません。

比較を行うのであれば、どの事実関係が共通し、どの事情が異なるのかを示す必要があります。


4.第三者委員会は、全ての言動をパワハラと認定したのでしょうか

ここで、兵庫県の第三者調査委員会報告書そのものに目を向けます。

委員会は、調査対象となった言動の全てをパワハラと認定したわけではありません。

報告書には、問題となる情報が寄せられながらも、パワハラと認定しなかった事案が含まれています。

その一つが、「知事であることを強調する発言について」です。

4-1.「オレは知事やぞ」との発言をめぐる情報提供

報告書には、職員が資料の誤りを口頭で修正して説明した際、知事から「オレは知事やぞ」などと叱責されたとの情報提供があったことが記されています。

このような発言が事実であれば、職務上の地位を強調する威圧的な言動として問題になり得ます。

しかし、委員会は、具体的な場面を十分に特定できないことなどから、この発言についてパワハラと認定するには至りませんでした。

ここで重要なのは、問題となり得る発言についての情報が存在することと、その発言が調査によって事実として認定されることは異なるという点です。

委員会は、問題がありそうな言動だからという理由だけで、全てをパワハラと認定したわけではありません。

4-2.非認定事例は何を意味するのでしょうか

この事例は、第三者委員会が認定と非認定を区別していたことを示しています。

ただし、非認定事例が存在するからといって、他の認定が全て正しいと証明されるわけではありません。

また、この事例は、言動の存在自体を十分に認定できなかったという問題を含んでいます。

したがって、言動の存在が認定されたうえで、その法的評価が争われている「はばたんペイの件」と、全く同じ条件で比較することはできません。

それでも、委員会の判断過程を検証するうえでは重要な資料です。

第三者委員会が全ての事案を機械的にパワハラ認定していたわけではないことと、個々の認定が妥当であるかどうかは、区別して評価する必要があります。


5.「はばたんペイの件」――第三者委員会は何を認定したのでしょうか

ここからは、相手方が具体的に指摘した事案を検討します。

第三者調査委員会の報告書には、独立した項目として「はばたんペイの件」が設けられています。

5-1.報告書に記された出来事

報告書によると、はばたんペイのキャンペーン用うちわについて、斎藤知事は、自身の顔写真やメッセージが掲載されていないことを問題としました。

その際、知事はうちわを見ながら舌打ちをし、大きなため息をついたと認定されています。

その後、担当課では、知事の顔写真とメッセージを掲載した新しいうちわを追加発注しました。

さらに、この知事協議の様子は庁内の多くの部署に広まり、事業のポスターなどを作成する際、担当課が知事の名前や写真を入れるよう気遣うようになったとされています。

知事自身も、協議の際に顔写真やメッセージの有無が問題となったことは認めています。

ただし、これは報告書における認定内容であり、当研究所が独自の調査によって同じ事実を認定したものではありません。

5-2.委員会は②についてどう判断したのでしょうか

委員会は、知事の顔写真やメッセージを掲載する必要性について検討しています。

知事から事前に明確な指示があった場合は別として、そうした指示がないのであれば、顔写真やメッセージを掲載しなかったことが当然に職員のミスや業務上の怠慢になるわけではありません。

また、舌打ちやため息によって不満を示し、職員を萎縮させるような対応は、業務上の指導として相当な方法とはいえないと評価しています。

つまり、委員会は、知事が不満を抱いたこと自体を問題にしたのではありません。

その不満を示す方法や、職員の業務上の責任との関係を検討しています。

5-3.委員会は③についてどう判断したのでしょうか

今回の議論で中心となるのは、③「労働者の就業環境が害されること」です。

委員会は、舌打ちやため息という一度の言動だけを取り上げて、職場への影響を判断したわけではありません。

報告書では、この出来事が庁内に広まり、知事が関係する広報物に知事の名前や写真を掲載するよう、職員が気遣うようになったことを認定しています。

また、知事からの叱責を恐れることによって、本来の業務とは別の気遣いが必要となり、職員の疲弊や不満、士気の低下につながったと評価しています。

ここには、単なる不快感とは異なる問題があります。

職員が本来の業務上の必要性とは別に、知事の反応を予測して対応を変えるようになったという、職場での行動への影響が認定されているからです。

したがって、第三者委員会の判断を「一度の舌打ちやため息だけでパワハラ認定した」と要約することは、報告書の判断過程を十分に反映していません。


6.それでも、③の判断に疑問を示す余地はあるのでしょうか

ここで、相手方の主張をできるだけ有利に解釈してみます。

ただし、以下は相手方が実際に述べた文章ではありません。当研究所が、検証のために考えられる反論を再構成したものです。

「一度の舌打ちやため息をきっかけに、職員が知事の顔写真を入れるよう気遣ったとしても、それだけで平均的な労働者の就業環境が害されたといえるのでしょうか」

この疑問には、検討する余地があります。

厚生労働省の指針では、③の判断に当たり、就業する上で看過できない程度の支障が問題となるためです。

例えば、次の点を検討することが考えられます。

  • 職員が抱いた心理的負担は、具体的にどの程度だったのでしょうか。
  • 知事の名前や顔写真を掲載するよう気遣うことによって、どのような業務上の負担が生じたのでしょうか。
  • 認定された職員の疲弊や士気の低下は、③の要求する程度に達していたのでしょうか。
  • その判断は、平均的な労働者の感じ方という基準に照らして、十分に説明されているのでしょうか。

これらは、第三者委員会の認定を検証するための正当な問いです。

しかし、ここで注意すべきことがあります。

判断の理由について追加の説明を求めることと、判断が恣意的であると断定することは異なります。

委員会は、職員への影響について具体的な認定を行っています。

そのため、認定が恣意的であると主張するのであれば、例えば、職員への影響を認定した証拠が不十分であることや、認定された影響が③の要件を満たさないことを、具体的に説明する必要があります。

相手方の「一過性」という指摘は、検討すべき事情の一つではあります。

しかし、それだけでは、委員会が認定した職場への影響を否定することはできません。


7.「他の組織ではパワハラにならない」という比較は成立するのでしょうか

相手方は、他の組織で同様の言動があっても、パワハラと認定されるわけではないと主張しました。

この問題については、前述の裁判例が参考になります。

裁判所は、職場での言動について、行為の内容だけでなく、事実認定、当事者の関係性、業務上の必要性、言動の状況などを踏まえて判断しています。

そのため、表面的に似た言動であっても、具体的な事情によって評価が異なる場合があります。

例えば、上司がため息をついたという行為だけを取り出して比較しても、その前後に何があったのか、どのような関係性だったのか、どのような影響が生じたのかが異なれば、単純な比較はできません。

また、ある組織で問題視されなかったことと、適切な調査を経てパワハラに該当しないと判断されたことも、同じではありません。

したがって、他の組織との比較を根拠とするのであれば、少なくとも比較対象となる事例を示す必要があります。

今回、相手方は具体例の提示を拒否しました。

そのため、相手方の比較による主張については、第三者委員会の認定を否定する根拠として妥当かどうかを確認できませんでした。

ただし、具体例を提示しなかったことだけをもって、相手方の主張が虚偽であると結論づけることもできません。

ここで確認できるのは、比較の根拠が提示されなかったため、その主張の妥当性を検証できなかったということです。


8.「一過性」という事情をどう評価すべきでしょうか

相手方は、知事の言動について次のように主張しました。

あくまでも一過性の出来事でありパワハラ認定は恣意的。

この主張は、「一過性である」という事実に関する評価と、「認定が恣意的である」という結論から構成されています。

しかし、両者の間には、追加の論証が必要です。

厚生労働省の指針では、言動の頻度や継続性は考慮されますが、一度の言動でもパワハラに該当する場合があります。

また、今回の「はばたんペイの件」では、委員会は言動そのものに加えて、その後の職場への影響も認定しています。

したがって、仮に舌打ちやため息が一度の出来事だったとしても、それだけで委員会の判断が誤っていることにはなりません。

一方、一度の言動であることを全く考慮する必要がないというわけでもありません。

言動の程度が比較的軽く、職場への影響も限定的だった場合には、③の要件を満たすかどうかが問題となることはあり得ます。

重要なのは、一過性か継続的かという二分法ではなく、具体的な言動とその影響を検討することです。

「一度だからパワハラではない」という一般論も、「不適切だから当然にパワハラである」という一般論も、十分な判断基準にはなりません。


9.相手方の主張を補強して検討することについて

今回の検証では、相手方が明示的に述べていない論点も取り上げました。

例えば、「はばたんペイの件」について、職員の疲弊や士気の低下が、③の要求する「就業する上で看過できない程度の支障」に達していたのかという疑問です。

これは、相手方が提示した論点をもとに、より具体的な検証課題として当研究所が再構成したものです。

しかし、相手方自身がそのような論証を行ったことを意味するものではありません。

この区別は、議論を記録するうえで重要です。

当研究所が相手方に有利な反論の可能性を検討したとしても、それによって相手方の実際の主張が補強されたことにはなりません。

反対に、相手方の論証が不十分だったとしても、その主張から導かれる検証課題まで無視することは適切ではありません。

当研究所は、相手方の主張が成立する可能性も検討し、そのうえで、確認できる資料がどのような結論を支えているのかを整理します。


10.議論の経過と検証結果

今回保存された投稿記録と参照資料から、主な論点を次のように整理できます。

この整理は、第三者委員会の全ての認定が正しいことを証明するものではありません。

また、相手方の主張が今後さらに具体化されれば、評価が変わる可能性もあります。

本記事の検証対象は、保存された投稿記録と、今回参照した公表資料から確認できる範囲に限られます。


11.投稿が閲覧できなくなったことについて

今回の議論に関係する相手方の投稿の一部は、記事作成時点でX上から確認できなくなっています。

当研究所では、当時の投稿を記録したスクリーンショットを保存しています。

ただし、投稿が閲覧できなくなった理由については確認できていません。

議論の内容を踏まえて削除した可能性も、別の事情による可能性もあります。

そのため、投稿が閲覧できなくなったことをもって、相手方が自らの主張の誤りを認識したと断定することはしません。

投稿の内容から確認できる論理上の問題と、投稿者の内心や削除の動機は、区別して扱う必要があります。


12.結論――認定への疑問と「恣意的」という断定は異なります

今回の議論では、相手方が「はばたんペイの件」を具体例として挙げ、パワハラの三要素のうち③の判断に疑問を示しました。

この指摘によって、検証すべき対象が明確になりました。

実際に第三者調査委員会の報告書を確認すると、委員会は舌打ちやため息という行為だけでなく、業務上の必要性、指導の態様、職員の萎縮や業務対応への影響などを検討しています。

また、裁判例を確認すると、職場での不適切な言動が直ちに民事上の責任を生じさせるわけではなく、具体的な事実関係と判断基準が重要であることが分かります。

さらに、第三者委員会の報告書には、情報提供があってもパワハラと認定しなかった事案も存在します。

これらの資料から、第三者委員会がどのような事情を重視したのか、また、認定と非認定をどのように区別したのかを検討することができます。

もっとも、委員会が具体的な理由を示しているからといって、その判断に誤りがないことまで保証されるわけではありません。

特に③の要件については、認定された職場への影響が、平均的な労働者の感じ方を基準としても、就業する上で看過できない程度の支障に達していたのかという問題を、引き続き検討することができます。

しかし、今回確認できた相手方の発言だけでは、第三者委員会の認定が恣意的であったと結論づける十分な根拠は示されていません。

「一過性である」という事情は、認定を検証するための材料にはなりますが、それだけで認定の誤りを証明するものではありません。

第三者委員会の判断を批判することは、当然に認められるべきです。

そして、その批判が具体的な事実と判断基準に基づいているかどうかも、同じように検証される必要があります。

当研究所は、調査機関の判断を権威だけで正当化することも、十分な根拠なく否定することも避け、今後も資料に基づく検証を続けます。


13.参照資料・関連記録

第三者調査委員会

  • 兵庫県「文書問題に関する第三者調査委員会」調査報告書(2025年3月19日)
    https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk19/bunsho_daisansya.html
  • 同報告書・本文PDF
    https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk19/documents/honnpenn2.pdf
  • 同報告書・ダイジェスト版
    https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk19/documents/daijesuto.pdf

厚生労働省

  • 「あかるい職場応援団――パワーハラスメントとは」
    https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/harassment_list/power-hara/
  • 「裁判例を見てみよう」
    https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/judicail-precedent/
  • 「三洋電機コンシューマエレクトロニクス事件」
    https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/judicail-precedent/7/
  • 「ホンダカーズA株式会社事件」
    https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/judicail-precedent/27/
  • 「日本ファンド(パワハラ)事件」
    https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/judicail-precedent/17/

対話記録

  • 2026年8月21日のX上の投稿・返信記録(当研究所保存のスクリーンショット)
  • 【対話記録 #001】前回記事
    https://sfc-lab.com/2026/10/17/public-debate-001/

※本記事では、相手方の発言、第三者調査委員会による認定、裁判所の判断、当研究所の検証結果を区別して記載しています。引用したX上の発言は、保存された投稿記録に基づいています。


束京Faktencheck研究所(SFC-Lab)

記録に光を。議論に輪郭を。

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